東北文教大学が定員割れで開学

山形県山形市蔵王東北文教大学が開学したとのこと。
残念ながら募集定員90人に対し入学者55人です。

asahi.com:朝日新聞のニュースサイト
山形市片谷地に今春開学した東北文教大学(内田英子学長)と、山形短期大学から校名変更した東北文教大学短期大学部の入学式が4日、山形市の県民会館であり、新入生と留学生合わせて計387人が式に臨んだ。
 両大学を経営する学校法人富沢学園の内田硏一(えい・いち)理事長は「(4年制の認可まで)厳しい審査が続いた。県内に4年制の私立大学をつくることは創設者の念願だった」とあいさつ。
 東北文教大は山形短大を経営していた富沢学園が、より幅広い人材育成をめざして旧同短大敷地内に新設した4年制大学で、人間科学部子ども教育学科の1学部1学科に55人が入学。小学校の一種免許取得も可能となった。

初年度ですから、なかなかうまくいかないのは分かります。
許可出るのが10月ですから。
既に偏差値があまり高くない大学では、入試が始まっていますからね。

入学定員 入学者数 充足率
人間科学部 90人 55人 61%
入学定員 入学者数 充足率
短大 290人 332人 115%

しかし、地方、女子だとやはり短大のほうがニーズがありますね。

4年制大学の設置は創立者の念願だったとありますが、設立趣旨はどのようになっているのでしょうか。
設置申請書を見てみました。(http://www.dsecchi.mext.go.jp/d_0910n1/tohokubunkyo_0910n1.html)

「敬・愛・信」の道徳律による人格陶冶を基盤にして、社会で貢献できる人材の養成を行ってきた富澤学園は、「人間」そのものについて見つめ直すことが大切であること考え、四年制大学東北文教大学」の設置の必要性を強く感じている。

なぜ大学が必要なのかは特に記載されていませんでした。

(4)学生確保の見通し
1)山形県の状況
近年、日本の18 歳人口が減少傾向にある。しかし、大学等進学者数をみると、平成11 年は5,275 名、平成15 年は5,334 名、平成20 年は5,474 名となり、逆に10 年間で199 名、5年間で140 名増加している。この原因は大学等進学率の上昇にある。
山形県における大学等への進学率は、平成11 年の35.3%、平成15 年の38.2%から、平成20 年の45.1%へと、10 年間で9.8%、5年間では6.9%増加している。ここ5年間は年平均1.38%の割合で上昇していることから、今後も大学等への進学率は、漸増傾向が続くと考えられる。(略)
したがって、山形県においては18 歳人口が減少傾向にあるものの、今後しばらくの間は、大学等進学率が上昇することによって、大学等進学者数が漸増する傾向にあると予測される。(略)
ところで、山形県には四年制大学が少ないことから、多くの大学等進学希望者が県外に流出せざるを得ない状況にある。山形県における県内進学率をみると、平成18 年度は30.2%であったが、平成19 年度は29.4%、平成20 年度は26.5%となり、ここ3年間は年々減少傾向にある。
山形県の大学等進学者数は漸増傾向にあるものの、県内進学率が降下していることは、潜在的に県内の大学へ進学しようとする層が少なからず存在しているが、県内における大学が少ないことから、やむを得ず県外へ進学せざるを得ない状況になり、結果的に県内進学率が低下してしまったことを示すものである。
山形県では進学率が伸び、大学等への進学者数が漸増していること、特に女子の四年制大学への進学志向が高まっていること、保育系四年制大学への進学希望者がかなり多いこと(「2)地域ニーズ調査結果」参照)、県内に幼稚園教諭免許状と保育士資格、小学校教諭免許状を同時に取得できる保育・教育系四年制大学がないことから、高度の専門知識や技能を学んで免許や資格を取得しようとすれば、やむなく県外へ進学せざるを得ない状況にある。したがって、山形県における保育・教育系四年制大学は十分に学生を確保できるものと考えられる。

ナイス楽観主義!

学外の調査機関である丸善株式会社に委託し、「人間科学部子ども教育学科」について、山形県内を中心とした東北6県および新潟県内に所在する高等学校100 校の2年生8540名を対象にして、、高校生が期待する教育内容や進学意向等の地域ニーズ調査を実施した。(略)
東北地方からの進学志望者の実数が257 名(定員90 名の2.86 培)あったことから、厳しく見積もっても入学者は十分に確保できるといえる。

高校生がこの手のアンケートにまじめに回答するわけなかろうに。
十分確保可能のはずが実際は定員割れ、目算ずれた?

2.卒業後の進路・人材を受け入れる側のニーズ
学外の調査機関である丸善株式会社に委託して、事業所が期待する教育内容や人材像、卒業予定者の採用意向等について、平成19 年10 月、山形県を中心とした近隣の県(宮城県岩手県福島県)に所在する509 の事業所に対して「人間科学部子ども教育学科」の地域ニーズ調査を実施した。(略)
人間科学部子ども教育学科卒業生に対する採用意向」については、「求人したい」が45 件(13.9%)、「求人を検討したい」が113 件(36.6%)となり、全体で計158 件(48.9%)の事業所が求人を考慮していることが示された。この数字は定員90 名の1.76 倍にあたることから、卒業後の就職先については、十分に確保できるといえる。

こちらも目算ずれにならないことを祈ります。
この手のアンケートを元にするやり方は、地方空港建設時の需要予測みたいなもので、当てにしてはいけませんし、設立後検証しても意味がないお役所文書ですしね。

5.短期大学との相違
子どもだけでなく、子どもを取り巻く家庭や地域社会も含め、総合的に子どもの育ちを支援するためにリーダー的な立場で活躍できる人材であることが相違である。
幼稚園や保育園の現場では、園全体の保育方針や保育計画、対外諸団体との交渉や保護者への説明、保育者の特徴に合わせた人事配置等、保育者のリーダーとしての保育者と、保育実践をする保育者の双方の存在が必要である。
山形県を中心とした東北地方では、前者に相当する能力を有した保育者が少ないことから、今後、必要とされている人材である。また、同時に、主として経済的理由から後者に対する需要もきわめて高い。それ故、四年制大学卒業の保育者と短期大学卒業の保育者をともに養成することが地域の社会の要望に応えることになる。
すなわち人間科学部子ども教育学科は、将来的展望に立って社会の要請に応えるべく設置される教育機関であり、短期大学部子ども学科は地域のニーズに対して、取りこぼすことなくきめ細かに応えるための教育機関としての役割をもつ。この態勢によって、双方の教育機関は共存できるものと考える。

このあたりは審査過程で厳しく指摘された部分かもしれませんね。記述が多いです。
「大学と短大同じ学問をやっているが共存できるのか?」と
大学はリーダを育て、短大は現場担当者を育てるので大丈夫ですとのこと。

大学の名称
山形県には山形大学が存在することから、学校法人富澤学園が運営している山形短期大学の名称を使って山形大学とすることができない。そこで学園内で大学名の公募を行った。学園の教職員から寄せられた80 あまりの大学名の中から、もっとも多かった上位5つの大学名に絞り、理事会で審議して決定した名称が「東北文教大学」である。
ただし、「文教」がついた大学名として、北海道文教大学(北海道恵庭市)、文教大学(埼玉県越谷市・神奈川県茅ヶ崎市)、愛知文教大学(愛知県小牧市)、京都文教大学京都府宇治市)、広島文教女子大学広島県広島市)、滋賀文教短期大学滋賀県長浜市)がすでに存在していることから、こうした大学・短期大学と区別するとともに、「東北地方」に存在するという意味で名称を「東北文教大学」とした。

この項目はどの大学を見ても面白いですね。
山形教育大学とか東北教育大学で申請して却下されたかな?
○○教育大学というのは、国公立しか認められないのだろうか?

2. 学部の名称
新たに設置する大学の学部は、人間の行動を科学的かつ幅広く理解し、人間の文化や社会に対する幅広い知識と深い洞察力をもち、人間に関わる問題を総合的に考察できる人材を養成するために、学部の名称を「人間科学部」とし、国際表記は「Faculty of HumanSciences」の英語訳を用いる。
乳幼児期の保育および学童期の教育に関する研究を中心の機能とするが、教員養成だけでなく、教育や保育に関わる人間と心理・社会福祉・地域社会など、人間と人間に関する幅広い分野の教育・研究の機能をあわせもつこと、また、単一学科ではあるが、将来の学科増設の可能性を考慮して人間科学部を学部名としている。

将来の学科増設に含みを残すために教育学部とか保育学部ではなく、人間科学部ですって!


地域のための人材を地域で育成し雇用していく循環を作っていくことは大切なことです。
特に地方においては。大学のキーワードは『先生力』笑
今は何でも『力』つけますね。
文科省も『学士力』と言ってますしね。
がんばれ!これからもウォッチしてます!