粗利と営業利益、経常利益

会計のことって忘れ気味なので、備忘録で記載。
http://homepage3.nifty.com/domex/business/yogo_arari.htm
http://homepage3.nifty.com/domex/business/yogo_eigyo.htm

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売上総利益とは(粗利、荒利益、粗利率、売上原価)
売上総利益とは売上高−売上原価の計算式で求められる。P/L(損益計算書)で一番最初に現われる利益の名前である。

正式な名称は「売上総利益」だが、商売の世界ではそんなかしこまった呼び名は使わない。日常的には、粗利(アラリ、ソリ、粗利益、荒利)と呼ぶ。その方が、ゼニの音が聞こえそうだろう。その粗利とは、文字通り大雑把な利益のことだ。つまり「売上−売上原価」だから、最終的な正味の利益(P/Lで言う当期利益)ではない。

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■売上原価との関係で粗利の意味を理解しよう
粗利を理解するにはまずもって売上原価を理解しないといけない。所が「売上原価とは何か」、というとこれが結構難しい。キチンと答えられるビジネスマンは意外と少ない。仕入原価でも、製造原価でもないのだ・・・
 例えば、70円の菓子を10個仕入て、100円で8個売ったら、売上800となる。その時の売上原価はと言うと、700ではない。8個分の8×70=560円となる。2個は売れ残ったから原価(費用)に入れないで期末在庫という資産になる(損益計算から除かれる)。つまり売上原価とは「売れた分に対応した原価」なのだ。
繰越在庫がある場合では、売上原価=期首在庫+当期仕入−期末在庫 となるこの計算式から分かるように、期末在庫をどう評価するかによって粗利は変化する。例えば事実に反して過大に評価すると粗利は増える。過少に評価すると粗利は減る。前者は業績をよくしようする粉飾決算の手口であり、後者は脱税目的の手口である。

■粗利とは、商売の大元の利益のこと
話を粗利に戻そう。粗利とは、商売の大元の利益と言う意味になる。あるいは商品売買益、商品がもたらす利益とも言える。商品1単位当たりの粗利は「売価−仕入」で簡単だ。これは商売ではとても重要だ(蛇足ながら商品売買業なら管理会計限界利益に相当する。製造業では粗利≠限界利益である)。
ついでに言うと、粗利が赤字になることは無い。先の例で、どんなに販売不振で1個しか売れなくても、100-70で必ず黒字だ。つまり粗利が赤字になるのは原価割れで売るときだ。売れなかったものは損益計算(P/L)から除外されて、費用にならない。在庫、すなわち資産としてB/Sに残るのだ。 
ビジネスの会話で「この粗利いくら?」とか「この事業の粗利率は?」なんて気軽に使ってみたい。そのほうが通らしくてイイ。というわけで「売上総利益」は教科書や決算書でのみしか使われないさびしい言葉なのです・・・・

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■粗利率とは
P/Lの粗利の下には販管費、営業外費用・・・などいろんな費用がある。だから粗利はまずもって大きい方がよい。通常、売上が増える(増収)と粗利も増える。売上よりも売上原価が増えると粗利は減る。だから金額の絶対値よりも効率、粗利率(売上総利益率=売上総利益÷売上高)が重視される。これは売上原価率の反対側だ(足せば100%だから)。
あなたの会社の粗利率はどの位か知ってますか?。業界や業種ごとの粗利率の違いを見ると面白い。一般にモノを扱う会社は粗利率は低いものだ。あのトヨタですら20数%程度(売上が17兆円とでかい・・・日本一・・・、だから粗利率がその程度でも最終利益は1兆円を超す)。 暗闇から這い上がりつつあるゼネコンでは一桁台の会社もある。100円ショップで上場しているキャンドゥ(ダイソーは非上場なので不明)は意外や意外34%だ。
しかし世の中には優良・ビックリの会社がいるものだ。花王はなんと50%だ(洗剤なんか安売りだろうは間違い。同社のコストダウン力と新製品開発力はすごい 04/3期)。国際的なところではインテルも軽く50%を超す(独占だもん。04/4-6期は60%だとか。ちなみにR&D比率は15%、営業利益率は25%、当期利益率は20%前後だ)。
セブンイレブンの粗利率はどのくらいか知っていますか?77%(04/2月期)だ。もちろん本部の話し。末端は小売業なのだが本部は小売ではなく情報サービス業に近い。お店から受け取るロイヤリティーや経営指導料が主だから売上原価が少ないために異様に高い値になる。ついでに営業利益率は35%と超高収益だ。末端のお店の粗利率はと言うと平均30%くらい。
医薬品業界の粗利率も高い(失礼ながら、昔から薬九層倍といわれているよね)。清涼飲料業界も高い。コーラ(ボトラー)などは42%、伊藤園は50%、キリンビバレッジは57%・・・。一般に、粗利率が高い企業は製品の差別化による高価格政策を取れる企業(製品力で優れる)か、規制により保護されているか、流通における独占的な強みがある、あるいは流通コストがやたらと重荷になる企業に多い。
業界構造として販管費比率が高いケースも多い。販売・流通コスト、研究開発費がやたらとかかるから、価格政策に躊躇して高い粗利が確保されるのだろう(でもこのパターンは崩れつつある)。 さて、高粗利率企業の例を書いたけれども、粗利率は異業種での比較には使わない。事業の基本構造が違うからだ。同業者間での比較で意味がある。 ところで、ヨノナカニハモットスゴイ会社がある。あの中村さんの特許紛争の会社、日亜化学工業はナナント、経常利益率が53%(売上1800億、経常利益948億円 H15/12、粗利率は不明)・・・いいナー

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営業利益とは

P/L(損益計算書)で最初に現われる利益項目は売上総利益(粗利)である。その粗利は商品がもたらす利益なのだが、何もしないで商品が売れるわけではない。販売努力をしたからであり、その販売を支える内部のいろいろな管理活動もある。と言うわけで、それらを含めて「販売費及び一般管理費」と呼ぶ。でも長すぎるので販管費と略する。一口に販管費と言っても中身は実に雑多だ。それについてはここでは省略して次に進もう。
販管費の下に現われる利益が営業利益である。営業利益=売上総利益販管費よく使う言葉だが『営業利益って何?』と問うと粗利と同じで、うまく答えられない人が多い。『営業で得た利益』では意味不明だ。ここはズバリ「本業で稼いだ利益」、「本業の利益」と覚えよう。
本業って? メーカーなら作って売るが本業。商売なら仕入れて売るが本業と言うわけだ。ふつう好況期は黒字だからあまり気にしないが、不況時はこの営業利益が注目される。なにしろ本業の利益が赤字だとヤバイよね。

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経常利益とは
さて、本業という区分で線を引いたのだから、そこから下は非本業の部というわけだ。とりわけ金融の稼ぎ(受取利息や配当金)や金融の費用(支払利息など)は普通の会社にとっては非本業である。それらをP/Lでは営業外損益の部と呼んでいる。その下に、ようやく経常利益が現われる。経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用
『経常利益って何?』・・・これも当たり前のように使われている言葉だけれど、難しい質問だ。まともに答えられる人はほとんどいない。  例えば、・算出式で応えるのが精一杯・・・普通はこれが多いけれど、単なる式では意味を説明できていない。・毎期発生するであろう会社の経常的な利益・・・説明文に「経常」が入っていてはダメだよね。でもいい線だ。 そもそも「経常」の意味が分からないと説明できないはずだ。辞書で引くと「常に一定の状態で続くこと。繰り返すこと」などがある。この『繰り返す』がミソだ。つまり、「P/Lの一番上の売上高〜ここの経常利益までの段階(プロセス)は毎期繰り返して発生している事業活動」と言うわけだ。 (毎期とは決算期間のこと、一年でも半年でもかまわない) 当たり前だけれど、売上は毎期繰り返す。販管費の中も毎期似たように発生する。金融活動だって、企業では受取もあれば支払もある。と言うわけで・・・ 経常利益とは『毎期繰り返す事業活動の結果の利益』という意味だ。新聞などで増益、減益と言うばあいはこの経常利益を指す。そのくらいP/Lで一番注目される存在だ。長い間、日本企業は経常利益主義と呼ぶくらいにこの利益項目にこだわってきた。

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特別損益とは
何となく分かってもらえただろうか。難しい言い回しだから少し腑に落ちないかもしれない。しかしその下を見ると、改めて理解できるだろう。営業利益で本業と非本業を区分したように・・・毎期繰り返すと言ったのは、裏返すと企業活動の中には繰り返さないものもあるからだ。「非経常」とは表現しないけれど、臨時的・例外的な取引があるのだ。資産売買による益がでた損がでた、災害による損失、リストラ費用などその他臨時的なもの(ちなみに不動産会社の土地のように販売用資産の売買損益は本業に入れる)。これらは毎年決まって発生するわけではない。大企業は資産が多いから毎年いろいろと発生するが、本業ではないし例外的なものだ。
一般に特別利益よりも損失計上の方が多い。その特別損失のことを特損と呼ぶ。2000年前後の負の清算を迫られていた頃は、不良債権や不良資産の処分で数百〜数千億円規模の特損計上を余儀なくされた大企業が続出した。
こうした臨時的なものを経常利益の前に含めてしまっては、損益の質が読み取れなくなるし、前年度との比較もしにくい。だから特別損益の部として外され、経常利益を境にして、毎期繰り返すものと繰り返さないものに分けたというわけだ。

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当期利益(=当期純利益、税引き後利益、最終利益)とは
続いて、税引前利益=経常利益+特別利益−特別損失 となる。なお、連結決算のP/Lでは「税金等調整前当期利益」と呼ばれる。当期利益=税引前利益−法人税、住民税及び事業税+法人税等調整額 となる。法人税等調整額は税効果会計のルールで生じる調整項目である。
商法では当期利益、金融商品取引法では当期純利益と呼ぶ。いっそ同じくすればと思うが、それでいて、たんに純利益とか税引後利益とも俗称されている。マスコミ記事では最終利益(最終損益)と表現されることもある。会計用語ではない通俗的な表現であり分かりやすいからだろう。 とにかく、いろいろな利益の中の最後の利益項目である。これぞ期間の最終利益なのだ。「最後の手取り」、「結局いくら儲かったんだ」という意味だ。
 日本は経常利益を重んじる習慣があると述べたが、アメリカ企業ではこの当期利益を重視する。それは、この値が株主資本を増やす源泉になるからだ(ステークホルダー参照)。今日有名なROE(自己資本利益率)の計算には当期利益を使う。 ところがそう簡単でない場合がある。特別損益の額が大きいと当期利益が影響を受ける。一時的な特別利益や損失の額を排除して評価したいときは、経常利益×60%を「修正当期利益」とする方法もある。税金が40%位という仮定だ。