姫路独協大法科大学院入学者ゼロの可能性&その他大学院の対応

姫路独協大兵庫県姫路市法科大学院が先月末に行った2010年度入試で、合格者がいなかったことが分かった。再募集をしない限り、入学者ゼロという異例の事態で新年度を迎えることになる。大学院の経営環境は厳しくなり、学内では、11年度以降の募集停止についても議論が出ている。
 法科大学院をめぐっては、乱立による「質の低下」が指摘されており、文部科学省は事実上、統合や再編を促す指導を強めている。中央教育審議会文科相の諮問機関)の特別委員会も昨春、新司法試験の実績で低迷が続く大学院に「抜本的見直し」を求め、実質的に廃止も含めた検討を迫っていた。仮に姫路独協大が募集停止を決めれば、04年度の法科大学院制度開始以来、初の撤退校となる。
 同大の入試は1月30、31日にあり、今月5日に合格発表があった。志願者は3人だったが、合格者はいなかった。
 同大はこれまで、5月ごろに入試要項を公表し、秋に1次募集、年明けに2次募集の試験を実施していた。だが、志願者が減ったこともあり、今回は1月末の1回のみという対応を取った。
 再募集の可能性について吉崎暢洋・法務研究科長は「やるかやらないかも含め検討中」としているが、学内関係者は「仮に実施しても、入学者確保の見込みは薄い」と話す。今後の撤退について、吉崎研究科長は「(するかしないか)両面から検討中。今回の試験結果も踏まえ、内外の意見を聞きながら判断する」としている。
 04年度に開校。消費者法の重視や地域密着型法曹の養成を掲げてきた。しかし、新司法試験の合格者数は過去4回で計3人と、全74校中、最も少ない。入学者は07年度8人、08年度7人、今年度も全校中最少の5人だった。09年度には定員を40人から30人に削減し、10年度ではさらに20人に減らしていた。
 第三者機関による評価でも、入試選抜や定員確保に問題があるとして「不適合」判定を受けている。先月には、中教審特別委の作業班による各校調査で、学生の質の確保などで大幅な改善が必要な14校に区分けされた。

http://www.asahi.com/edu/news/TKY201002080387.html

受験者3名を無条件に合格させない姿勢は評価されるべきでしょう。
姫路獨協大学は、ハードを姫路市が、ソフトを獨協学園が受け持ち、 日本で初めて官学協働の「公私協力方式」で設置された大学で、その後全国各地にできた公設民営大学のモデル(参考wikipedia)だそうです。

法科大学院14校にイエローカード - TK独り言にもあるように、イエローカードをもらっていました。中教審からの指摘は以下の通り。

入学者選抜の機能が実質的に機能していないため、入学者の質が十分に確保されていないといえる。入学者の質の確保のための今後の取り組みも不明確である。さらに、新司法試験について相当に厳しい合格状況であることも踏まえれば、改善が着実に実施されているとは言い難く、重点的にフォローアップを実施する必要がある。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2010/01/27/1289655_1_2.pdf

非常に厳しい指摘である。この指摘が受験生減少の更なる呼び水になってしまっている可能性はあるが。
その他法科大学院の状況を見てみる。
*これらはあくまで私見です。

東海大学
中教審からの指摘は姫路獨協大学同様厳しいのもですが、反論をホームページに掲載していました。

1)教育の質の改善という点について
 →すでに改善に着手しています

東海大学法科大学院では、もともと2010年度から大幅なカリキュラム改訂を行う予定でおり、現に改訂をすませています。その結果、法律基本科目について演習的時間等を増加させ、少人数教育の実がよりあがるようになっています。また今後も、法律基本科目教育の充実・強化をつづけていくことにしています。
またこれに応じて、教師陣の若返りも図られることになっています。とくに、東海大学法科大学院出身の弁護士が、今年から本格的に当法科大学院のスタッフに加わり、学生の指導に取り組んでくれます。このような対応は、なお増強していく計画です。
その成果は司法試験の合格という結果に必ずや反映されるでしょう。


2)入学者の質という問題について
 →入学した学生に、手厚く、かつ多角的な支援を行います
「入学者の質」。この課題は、適性試験の成績や、日弁連の既修者試験の成績だけで評価できる問題ではないと考えています。
「司法試験の合格」という形でこの問題への一つの答えが出される事は確かでしょう。そして、その成果がまた優秀な受験者を増やしてゆく、という循環になるのでしょう。そういう意味で、私たちは、東海大学法科大学院に入学してきた人に、十分な教育をしてゆかないといけないと、あらためて心を引き締めているところです。個々の学生諸君のニード・進捗度に応じて、課外で補習・支援する態勢を整えていますから、これらを利用して自分の能力をしっかりと磨いて下さい。
それと同時に、東海大学法科大学院としては、入学した皆さんがただ司法試験科目だけができるという狭い法曹になって欲しくはないとも考えています。2009年には、「いま企業法務に求められている法律家像」、「エンタテインメント法」という二つのシンポジウムを開催し、教育課題を検討してきました。これからの法曹に必要かつ貴重な情報や知識を豊富に提供できる法科大学院であるという、他校にはない特色をも併せて一層強調・強化していきたい、と計画しています。 

http://www.u-tokai.ac.jp/TKDCMS/News/Detail.aspx?code=law_school&id=3244

いいですね。はっきりと主張するのは。ですが、好循環になるのが難しいし、そのための質の確保を中教審は言っているのでしょう。今後に期待です。

東北学院大学
中教審から姫路獨協大学同様に「入学選抜の機能がなってない、改善もろくになってない」との指摘を受けていた。
しかし相当営業をがんばったのだろう、入学者確保しそうだ。
大学発表資料1,2
とは言え、難しいのは司法試験の合格というはっきりした数字が出てしまうこと。がんばれ!

愛知学院大学
中教審の指摘はすごいので抜粋します。

法科大学院として、改善の必要性が正しく認識されていないため、成績上位者による予備校の答案練習を組織的に支援するなど、受け入れた学生を自ら責任を持って教育しようという意識が希薄であり、法科大学院での教育を中心とした教育課程および学習指導体制を再構築する必要がある。
その他は同様に入学選抜できていない等

ある意味受験特化型で成果を出せれば好循環スタイルですね。

大阪学院大学
多様なバックグランドを持った方を募集しているようです。きびしめ。

神戸学院大学
こちらも反論をしているので参考まで

まず、「まとめ」の中の実地調査における委員の所見には、私どもの法科大学院は「質の高い入学者の確保の見通しが立っているとはいえない」とあります。これを伝えるある新聞の報道に接した在学生の中には、自分たちの質が低いということかと勘違いする者もおりました。私どもの法科大学院では、開学以来、厳正な入学試験を実施してきており、それを通じて質の高い学生のみを入学させてきました。そのため、開学当初からこれまで一度も、学生定員を確保することができなかったほどであります。したがって、質が高くない学生を入学させてきたことはありませんので、在学中の院生のみなさんも、この4月から入学を予定されている皆様も、自分に誇りと自信をもってこれからも勉学に励んでほしいと願います。
 また、「まとめ」の中の実地調査における所見には、「新司法試験の合格状況に関する分析・認識が不十分」、「新司法試験について相当に厳しい合格状況にある」とあります。たしかに、2007年度は4名、2008年度は6名、2009年度は3名の合格者があるにすぎず、必ずしも大量の合格者とはいえません。しかし、法学部以外の出身者で法科大学院に入学して初めて法律の勉強をした人でも修了直後の新司法試験で合格するという成果を2008年度にも2009年度にも得ておりますし、合格率でいえば、2007年度と2008年度とは、全国平均レベルであって、著しく低いわけではありません。私達は、学生のほとんどを法学未修者が占める本学法科大学院のありかたは、法科大学院の本来のありかたに添った、ある意味で理想的な法科大学院であり、その未修者を教育し、合格にまで導いているという自負があります。単に法学既修の成績優秀者を集めて数字としての合格率のみを喧伝する法科大学院とは異なることに自負を持っています。そういう点で、これまでの教育のあり方がまったくの間違いであったなどというわけではないと考えます。

http://www.ls.kobegakuin.ac.jp/~lstopweb/list.cgi?id=2010020514015430

まあそう言いますよね。

結局のところ中教審は何が指摘したかったのかとも思います。
法科大学院が多すぎるから退場させたいがレッドカードは出せないのでイエローカード厳しい指摘をし、学生が集まりにくくさせ、自然消滅させるための方策とも考えられます。

結局、入学試験が2倍以上の競争があること、新司法試験で合格者をそこそこ出していることでカードが出されるか否かになっています。確率論でいえば入学時にテストの点数がいい人が司法試験の合格率が高いのは自明の理だと思いますが。それを打破するための法科大学院じゃなかったでしたっけ?