アメリカの教授終身制の光と影

米南部アラバマ州アラバマ大学ハンツビル校で12日に起きた女性科学者による発砲事件をきっかけに、米国で研究者にかかる心理的重圧が議論を呼んでいる。
 同大の生物科学部准教授エイミー・ビショップ容疑者(45)は同日午後、学部の教職員会議で同僚に拳銃を発砲。教授ら教員3人が死亡、ほかの教職員3人が負傷した。
 警察で動機を調べているが、米メディアはビショップ容疑者が昨年から「テニュア(終身在職権)」の審査を受けており、事件の直前に却下が決まっていたことに焦点を当てている。
 米国では、テニュアは若手研究者が目指す大きな目標だ。5〜6年のうちに研究成果を上げ、教授会の審査を通ることで、「テニュア」を獲得できる。連邦教育省の統計(2005〜06年)によると、大学教員のうちテニュアを所持するのは半数にとどまる。
 テニュアがないと、任期付きの雇用契約など不安定な地位に追い込まれ、肩書も准教授止まりが普通。ビショップ容疑者も2003年にハーバード大からアラバマ大に移り、今学期限りで雇用契約の打ち切りを迫られていた。報道によると、最近は「テニュアの審査が公平でない」と周囲に不安を漏らしていた。
 米紙ニューヨーク・タイムズのウェブサイトでは事件後、「パブリッシュ・オア・ペリッシュ(論文を書かなければ消え去るのみ)という文句が、どれほど人間の心理をゆがめるか」「大学当局がパートタイム依存を強め、少ないテニュアの口への競争が激化している」「テニュアの審査をもっと透明に」など、テニュアに関する読者投稿が相次いだ。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100215-OYT1T00157.htm

銃乱射はあまりに極端ですが、日本の大学でも任期制が広がっています。これはすべての業種に当てはまることでもあるかもしれませんが。
教授になったら安泰という制度は日本でも変わりませんが、米国も同様みたいですね。よくアメリカの制度は優れているって論調を聞きますが。

少し話は変わりますが、フィンランドをはじめとする高福祉高負担、個人の所得税など税率は高いが、企業負担は軽くし、例えば雇用の削減もフレキシブルに行い、解雇された人間の職業支援や失業保険を充実させる制度が現在各方面から評価されているように実感します。ですが、高負担の議論が欠落している気がします。政治のリーダシップとまるで他人事のように意見し、税率があげる前にと無駄の排除という名の官僚たたきをいつまでも続け、全く先に進まない昨今。政治家がポピュリズムに走ってしまうのも、国民側に問題があるような気がしてなりません。