山口福祉文化大学〜定員割れ大学を入学式報道から探ろう(4)

山口福祉文化大学です。
題名と違いこの大学は紆余曲折を経て定員割れから脱出に成功した大学です。
ですが、その経緯そしてその内実は興味深いので記載します。

山口県萩市という6万人程度の小さな自治体にあるようです。

至誠館大学 - Wikipediaから抜粋

  • 1999年に国際情報学部を有する萩国際大学として開設
  • 開設時から入学者が少なく、経営改善の一環として、2001年より中国などからの留学生を積極的に誘致
  • しかし、当初から留学生が入国できないという問題が発生
  • さらにその後、留学生の失踪や不法就労が相次ぎ、2002年に広島入国管理局は中国人留学生127人に対し、翌年10月には在留資格認定証明書を交付しないことを決定
  • 2005年には募集学生数も3分の1にするなど経営改善に向けた努力をしたが、同年に、入学者数の著しい減少などにより約37億円の負債を抱えて、民事再生法の適用を申請(四年制大学を設置する学校法人として民事再生法適用申請は、東北文化学園大学についで2例目であるが、定員割れが原因で申請を行うのは全国で初)
  • 2005年度の1年次生は定員300人のところ、22人のみだった。2006年度の1年次生はわずか3人と2005年を更に下回った。
  • 2005年建築総合コンサルタント会社塩見ホールディングス(広島市東区)が再建支援を表明。
  • 2009年塩見ホールディングスの経営難に伴い同社単独での経営支援が困難となり、専門学校西日本アカデミー・阪神自動車航空鉄道専門学校などを運営するNACグループが共同支援を表明。

企画・連載 : 山口 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 「新学部には県内から100人程度の学生を迎え入れ、地元に愛される大学を作りたい」

 萩市内のホテルで会見した支援企業「塩見ホールディングス(HD)」(広島市)の村本章治・企業再生部部長(56)は、地元密着の大学づくりの姿勢を強調した。(略)

 「北浦の地にぜひ、高等教育機関がほしい」。1996年12月、萩商工会議所が萩学園理事長、萩市長、同市議会に旧萩女子短大の改組・4年制移行を申し入れたのが萩国際大の出発点だった。市と県から計40億円の補助を受け、99年4月、国際情報学部の単科大学として開学した。

 1学年の定員は300人。北九州地区などの近隣都市部から確保できる見通しだったが、初年度の入学者は204人。次年度以降、減少が続き、学生数確保のため、中国人を中心に留学生受け入れを進めた。

 だが、不法就労や失跡問題が起き、広島入国管理局が入学予定者に在留資格認定証明書を交付しない事態となるなど、大学のイメージは大きくダウン、入学者減に拍車が掛かった。

 今年度の学生数は、定員1200人に対してわずか194人。うち留学生が116人を占める。経営危機も深刻化し、教職員の大幅なリストラ、賃金カットを断行したものの、人件費や管理費、研究費などを合わせた年間経費3億円に対し、納付金・補助金収入は今年度、2億1000万円しかなく、資金ショートは目前だった。4金融機関の33億円を含め、負債総額は80業者からの37億円に上る。 

 開学から04年度までの5年間で、萩・北浦地区の高校生の入学はわずか26人。昨年の調査では、増設された3軒のアパート136戸のうち、利用は57戸にとどまり、地元密着とはほど遠い。「これまでの異常事態を払しょくし、今度こそ展望の開ける大学になってほしい」。市民共通の願いに、どう応えるかが問われている。


このような逆風の中、改革を進め定員オーバーの人数を集められるようになったとのこと。
すごいとしか言いようがありません。

http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20100406ddlk35100308000c.html
山口福祉文化大学民事再生法適用を申請した萩国際大から校名を変更して4年目で、社会福祉を学ぶライフデザイン学部同学科の一学部一学科制。
入学者254人の内訳は日本人60人、留学生が中国など7カ国194人。昨年度比で40人多い。
就学場所は、本校42人(日本人38人、韓国人4人)とサテライト教室の東京2カ所191人、広島21人。
全学生数は550人(日本人158人、留学生392人)になった。


実際は、地元のための大学ではなく、留学生のための大学でした。

  • 都市部(東京、広島)にキャンパスを作る
  • 中国を中心とした留学生を集める


先日記載した(危ない大学・消える大学 2011候補校を見てみよう<第一工業大学と都築学園グループ編> - TK独り言)の作戦とそっくりですね。
山口福祉文化大学の専売特許かもしれませんが。

日本人 留学生
山口萩本校 38人 4人 42人
広島サテライト 19〜22人? 1〜2人? 21人
東京サテライト 0〜2人? 189〜191人? 191人
60人 194人 254人

広島、東京の内訳は想像です。
しかしこの比率はすごいですね。

全入学者のうち留学生が占める割合:76%
そのうち、山口萩市の本校に通学する人数:4名
残りはほとんどが東京サテライト:190名程度と想定

要はほとんどの人が東京に進学しているわけですね。
サテライトといっても実質キャンパス化しているでしょう。


大きな地図で見る
その東京サテライトキャンパスが上記です。
細長いビルがサテライトです。
これが大学なのでしょうか。。

とはいっても、日本人は集められなくても留学生を集められる能力の高さは伺えます。

しかし残念ながら留学生で良くいわれるのが、ビザ目当て、出稼ぎ目的の留学生で、大学側もそれを黙認し、支援している構図です。
『私費外国人留学生の皆さんは、授業料(年額75万円)が、「山口福祉文化大学 私費外国人留学生授業料免除規則」に基づき半額免除になります。』と支援をしているのではないかと思われる一文があることが少し気になります。
また、このような留学生に対する経済支援は、正規の金額を払う日本人学生などに恩恵があるから実施されるべきでしょう。
先ほどの比率をみると日本人と留学生の就学場所が違う可能性が高いです。
遠隔授業などではネットやスカイプを使ったコミュニケーションとほとんど変わらない可能性もあります。

加えて、山口萩市本校入学者が実質42人となっては、自治体としても支援の程度を考えなくてはいけないでしょう。
ほとんどの学生(留学生)が東京に行ってしまうわけですから。

これらが杞憂であることを祈ります。