JAL IBMとのアウトソーシング契約を解消

IBMアウトソーシング戦略 - TK独り言などで書いた、
国内で圧倒的なアウトソーシング契約を誇るIBMがJALとの提携を解消かという話。

2010年6月22日 日本経済新聞
日航IBMと提携を解消-システム開発事業競争入札でコスト削減」
会社更生手続き中の日本航空は21日、運行管理システムなどを開発する日本IBMとの共同事業を解消する方針を固めた。両社で進めてきた独自仕様のシステム開発は割高で、業績低迷の一因になっていた。汎用ソフトの活用や競争入札による外部委託の拡大でコストを引き下げる。(中略)


日航と日本IBMは2000年に提携。JALインフォテック(JIT、東京・港)に日本IBMが出資した。出資比率は現在、日本IBMが51%、日航41%、その他が8%。運航や航空機メンテナンス管理などの業務システムを開発・運用している。
11年7月までに日本IBM保有するJIT株式を数十億円で日航が買収する方向で調整する。日航JITの企画機能を取り込み、今後のシステム開発の方向性を主体的に決める体制にする。日本IBMが少額出資の株主で残る可能性もある。
JITの子会社化で日航グループの社員数は約1000人増加するが、長期的には数百億円のコスト削減につながるとみている。(後略)


2001年7月に10年800億円の契約として話題になったアウトソーシング契約の見直しです。

【事例】JALが大型アウトソーシング - ITレポート(ユーザー事例):ITpro
日本航空JAL)が大規模アウトソーシングに踏み切った。中核システムの開発と運用を,10年間800億円の契約で日本IBMに委託する。 JALアウトソーシングの先行事例を徹底研究,問題の防止策を契約に盛り込んだ。運用のサービス・レベルだけでなく,開発生産性に関しても目標値を明確に決めた。


JALは今年7月1日から10年間,予約・発券,運行管理,会計・人事といった中核システムの開発・運用を日本IBMアウトソーシングする。「JALグループ全体のIT(情報技術)戦略の強化」(JALの浜田達夫IT企画室副室長)を目指して,システム開発スピードの向上や,コスト削減に取り組む。

日本IBMJALのシステム子会社「ジャルインフォテック(JIT)」と共同でJAL向けのシステム開発と運用に取り組む。さらにJITIBMのノウハウや営業力を活用して,JAL以外の企業向けの事業を強化する。現在100人程度いるJALのシステム部員は,引き続きJAL本体にとどまり,新システムの企画に従事する

今回のアウトソーシング契約で目を引くのは,契約にサービス品質の“保証条項”が多数盛り込まれていることだ。JALIBMとの契約を前に,大型アウトソーシングの先行事例を研究して,将来の問題の芽を摘むことにした。長期間にわたるアウトソーシング契約では,周辺環境の変化によって当初の前提条件が崩れ,所定の成果を上げられないケースも少なくない。

その結果,JALIBMの契約は,非常に緻密なものになった。「IBMと守秘契約を結んでいるので詳細は明かせないが,契約書類はA4判で10cm以上の厚さがある」(浜田副室長)。

例えば,JALIBMとの契約を期間途中に見直す権利を確保した。長期のアウトソーシングで散見される“なれ合い”を防ぐための措置だ。JALはサービスの品質や費用対効果を1年に1回,評価したうえで,契約を継続するかどうかを決める。「成果が上がらなければ,中途解約もあり得る。案件によってはIBM以外のインテグレータに開発を委託する選択肢も認めさせた」(浜田副室長)という。

両社の意思疎通を密にするために,意見交換の場を定期的に設けることも決めた。「JAL日本IBMの経営陣は6カ月に1度,部長クラスでは3カ月に1回,現場レベルでは毎月といった頻度でサービス内容について協議する」(浜田副室長)。

さらにJALIBMの契約には運用だけでなく,システム開発の生産性に関する条項も含まれている。開発を委託するシステムの種類や規模別に,開発スピードの目標値を定め,IBMに誓約してもらった。開発品質の数値目標を取り決めたアウトソーシング契約は国内では珍しい。詳細は不明だが,IBMJALに対して,システム開発期間をこれまでの50〜70%程度に抑えることを保証したようだ。この目標を実現するため,JALIBM,およびJITの3社は,少数精鋭による共同チームを作り,プロトタイプ手法を使って,開発スピードを上げる。


という当初の心意気は時間の経過とともに「なれ合い」となり、
しかもシステムの囲い込みによって他ベンダーの入り込む余地が無くなっていき、コストが高止まりする。
長期アウトソーシング契約の弊害です。
が、ベンダー側にとってはそこが利益かさ上げの仕組みなのですが。
「なれ合い」排除を考慮したとありますが、実際は。。


しかし提携を解消したからといって、
実際10年もアウトソーシングでやっているシステムを他社が担うのは至難の業であり、
数百億円単位のコスト削減になるとは到底思えません。
10年の歳月はシステム要員が育成されない弊害となっているとも思われます。
そこでIBMがどう動くかが興味深いですね。