大学改革「失敗」の履歴

中央公論2010年2月号の特集「大学の敗北」において、「大学ランキング」等の著書がある教育ジャーナリスト 小林哲夫氏の掲載文より抜粋します。
近年の大学改革の概要がコンパクトに表現されているので、備忘録として記載します。

  • 1995年から2009年までの15年間で216大学(短大は含まず)が作られた。
年度 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
増加大学数 13 10 10 17 17 28 20 17 15 16 11 10 11 10 11 5

※2010年は筆者が追記

1995 2009 増減
学部数 1440 2051 611増
入学定員 49万人 57万人 8万人増
  • 大学、学部新設ラッシュの要因
    1. 大学進学率の上昇
      • 79年26.1%→85年26.5%→99年38.2%→05年44.2%→09年50.2%
      • 女子の進学率の上昇。99年29.4%→09年44.2%
    2. 大学の拡大路線
      • 既存大学の拡大
        • (例)法政大学:1995年:7学部入学定員4890人→2009年:15学部5940人
        • (例)立命館大:1995年:8学部入学定員5430人→2009年:12学部6925人
        • (例)武蔵野大:1995年:1学部入学定員 400人→2009年: 6学部1155人
        • (例)帝京平成大:1995年:1学部入学定員800人→2009年:5学部2160人
      • 新設学部のブーム(資格が職業につながる分野)
        • 01〜05年福祉や医療系学部
        • 04〜06年薬学部
        • 05〜07年教育系やスポーツ系学部
        • 07〜09年看護学部
      • 薬、福祉、医療、教育系学部の新設が、文部科学省の大学設置にあたって「抑制」の対象から外れたため。(医、歯、獣医学部は「抑制」されており、新設できない。)
      • 文系社会科学系中心大学なのに、薬学部や看護学部を設置した大学
      • 薬学部バブルの崩壊
        • 95年45学部入学定員7720人→09年73学部13329人。
        • 入学者レベルの低下、国家試験豪華率低下、定員割れの悪循環。(参考:薬学部3割定員割れ)
      • 次は教育系学部が危ない
        • 04〜09年19学部、入学定員3040人増加。少子化もあり、そこまで教育需要は伸びていない。
      • 筆者追記※スポーツ系学部も危ないと思う。(参考:ブログ内の「スポーツ系」)
    3. 大学市場への新規参入
      • 福祉、医療、教育、看護分野はこれまで短大、専門学校が担ってきた分野。その存続のためには4年制大学への転換しかない。
    4. 規制緩和による大学、学部の設置の容易化
      • 2001年総合規制改革会議(内閣府)による答申。「大学や学部の設置に係わる事前規制を緩和するとともに、事後チェック体制を整備する」との方向性。
      • 2003年「高等教育における自由な競争環境の整備」
        • 学部、大学院研究科は学位の種類が変わらなければ認可を必要とせず、届出可
        • 専任教員の内規撤廃
        • 校地基準面積の緩和。大学設置、定員増の抑制方針撤廃。(地域制限の撤廃。医師、歯科医師など一部を除く分野以外での抑制撤廃など)
        • 総数の増加を伴わない収容定員の変更の届出可。(文学部を減らし教育学部を増やして定員の帳尻を合わせるなど)
        • 株式会社参入特例措置