学校法人のメリット 非課税、相続対策など

和田公人の学校の作り方という面白いページを見つけました。
学校法人のメリットの部分について抜粋したいと思います。

1.基本的に納税義務がなく、収益事業のみに低減税率での課税<和田公人の学校の作り方: 学校法人のメリット(1)より抜粋>

  • 通常、株式会社は、その利益に対して30%の法人税地方税である法人事業税などが課せられています。しかし、学校法人は、そのそも納税義務者に含まれていません。法人税法4条で、納税義務者が規定されているのですが、「内国法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。ただし、公益法人等又は人格のない社団等については、収益事業を行う場合・・・に限る。」となっています。
  • 別表第2で、この公益法人が具体的に列挙されているのですが、社会福祉法人や宗教法人と並んで学校法人も明記されています。また、専修学校のみを設置している学校法人も含めると書かれています。ということは、法人税については、免税というより、そもそも納税義務がないということになります。
  • ただし、収益事業を行う場合は、納税義務があります。逆に言えば、収益事業以外は非課税ということになります。収益事業は、学校の運営を財政面で支援するために、収益を目的として学校法人が行う事業なのですが、何でも良いというわけではありません。日本産業分類に基づいて18種類が指定されています。18種類となると実質的にほとんどの業種が含まれ、禁止されているのは、貸金業、クラブ・キャバレー、武器製造、風俗業など、常識的に考えて教育になじまない業種に限られます。
  • 課税されるのは、収益事業に関する収益に対してであり、学校事業は課税されません。しかも、この収益事業への課税も22%(一般法人は30%)という軽減税率が適用されます。しかも、みなし寄付金制度があり、所得の半分か200万円までであれば、学校に寄付したとみなして、損金として処理できます。つまり、乱暴に言えば、利益の半分にしか課税されないということになります。
  • これは、学校法人は教育を目的とし、本来であれば、国や地方公共団体が税金で行うべき教育の一部を民間が担っているため、その目的のために使われるお金であれば課税しないという考えに基づいています。学校法人が収益事業で利益を出しても、それは学校のために使われることを予定しているわけですから、課税する必要がないというわけです。


2.消費税、固定資産税や不動産取得税なども非課税<和田公人の学校の作り方: 学校法人のメリット(2)より抜粋>

  • 消費税は、受け取る側が負担するのではなく、支払う側が負担し、学校は代理で受領するだけですので、税金がかからないことによる直接的なメリットはありません。しかし、支払う側が消費税の負担がないとなると、税金がかかる他の教育機関より、学費の負担が少なく、入学者が増えることが期待できます。
  • もちろん、消費税が非課税になるのは、授業料など教育に直接関わる部分のみで、教科書代などは課税対象になります。通常は、学校の課税対象の売上は少ないはずですので、課税業者となる1000万円を超えることは稀と思いますが、教科書などの物品を学校が販売したり、食堂を直営している場合は、課税業者になる可能性があります。
  • 消費税以外に、固定資産税や不動産を取得した際に課税される登録免許税なども非課税です。もちろん、これらも法律で規定されている学校の用途に使用する場合だけです。かつては、地価の上昇を見込んで、学校法人が土地を校地という名目で購入し、固定資産税を免れるという行為も見受けられました。いまでは、税務当局も実際に教育の用に供しているかを厳しくチェックするようになりました。しかし、校舎の近くで、運動場や自転車置場ということであれば、更地に近い状態で固定資産税を負担することなく、土地を保有できます。ただし、職員用の駐車場なら課税されるようですが。
  • 文部科学省がまとめたページ:私立学校関係税制:文部科学省


3.節税として利用できる寄付控除<和田公人の学校の作り方: 学校法人のメリット(3)より抜粋>

  • 学校法人が直接関わる優遇税制以外に、もう1つ税制的なメリットがあります。それは、寄付控除という制度です。
  • 寄付控除とは、学校法人に寄付をした個人や法人は税金が助かるという制度です。具体的には、個人は寄付金額が5千円以上(総所得金額等の40%が上限)の場合に、その金額を所得から控除、法人は、寄付金の全額が損金算入できるというものです。
  • 分かりやすく言い換えれば、個人は5000円以上寄付すれば、寄付した金額分を収入から引いて、所得税を計算し直します。サラリーマンの場合は、源泉徴収所得税を天引きされていますので、確定申告することで、税金が戻ってきます。個人事業主などで確定申告をする場合は、所得から寄付した金額を引いて申告できます。税率が10%の場合ですと、5000円寄付すると500円ほど税金が返ってくることになります。
  • また、確定申告が寄付をする障害になっているということから、年末調整で済ませることができるように法改正する動きがあります。年末調整であれば、学校法人から発行される領収書を会社に提出するだけですので、寄付をする人が増えることが期待されます。
  • 法人の場合は、全額が経費として認められますので、儲かってる会社であれば、税金で取られるくらいなら寄付をしても、会社としては同じことになります。そのため、社長が母校に多額の寄付をするということもあり得ます。
  • このような寄付控除の目的は、学校法人が広く寄付を集めることで、その運営基盤を強固にしようということです。学校法人は、そもそも国や地方公共団体が行うべき教育サービスの一部を民間が担っているわけですので、国民から税金で集めて学校法人に補助しても、国民が学校法人に寄付して税金を免除しても、結果的に同じということです。国や地方公共団体が配分するより、学校法人の自助努力で寄付を集める方が民主的とも言えます。寄付であれば、学校法人の教育成果に比例して、集まると考えることができます。
  • いずれにせよ、寄付控除があることで、寄付という形の資金が集めやすくなっています。株式会社が配当負担のある資本金や金利を払わなければならない借入でしか資金を集めることができないのに比べてはるかに有利と言えます。
  • ところが、実際には、日本ではアメリカなどに比べてあまり寄付が集まらないのが実情ではあります。日本には寄付の文化がないことに加えて、確定申告がネックになっているのでしょう。しかし、一部の伝統校などでは強力な同窓会が組織されて、多額の寄付が集まっています。また、企業からお金ではなく、商品を寄付してもらうケースも増えています。自社の商品であれば、お金で寄付するより、節税効果が高くなります。企業にしてみれば不要な在庫を処分しながら、経費に計上できるということになります。


4.同族経営が多い理由は、相続対策<和田公人の学校の作り方: 学校法人のメリット(番外)より抜粋>

  • 学校法人の税制面のメリットがもう1つあります。相続対策です。
  • そもそも、学校法人には相続という概念はありません。学校法人の財産は個人のものではなく、法人として引き継がれるもので、その財産の管理を委託されているが理事です。逆に言えば、この理事の椅子を引き継げば、学校法人を引き継いだことになります。役割を引き継ぐだけですから、相続税はかかりません。しかし、実質的に、法人の全権を引き継げば、相続したのに近い効果が生まれます。
  • つまり、理事のポストを円満に子どもに引き継げば、相続税を払うことなく、学校法人を相続できるということです。もちろん、学校法人を引き継いだからと言って、それを勝手に処分して個人財産とするこはできません。しかし、株式会社の場合、その株を相続するのに相続税が掛かることを思えば、有利であることに間違いありません。