中学生レベルの学力が無くても入れる大学は改善を〜文部科学省

 学力検査がないAO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試の増加が学力低下の一因と言われる。文部科学省は来春入学の11年度大学入試から、AO入試でも受験生の学力を把握するよう各大学に求める。


 ◆高校3年生の実態

 「中学レベルの学力の問題が解けなくても大学に入ることができる。それが今の大学入試の現状です」。東京都心のビルの一室。高校生向けに中学の学習内容の学び直し教材を開発している社団法人「全国学力研究会」の理事長で、教育評論家の河本敏浩さん(42)が語気を強める。

 研究会は昨年、全国の高校1〜3年生を対象に全学年共通の「基礎学力テスト」(英語、数学、現代文)を実施した。内容は中学3年間に習う基本問題ばかりだが、年末までに結果が出た約2万人分の平均点は100点満点中、数学16・6点、英語35・8点、現代文42・4点。学年による差はあまりなく、数学に限れば受験学年の3年生が15・2点と最も低かった。テストを受けたのはいわゆる中下位校だが、河本理事長は「この層からも3割程度は大学に進学する」と言う。

 勉強しない高校3年生の実態を裏付ける別のデータもある。東京大学大学院の研究グループが、05年から当時高校3年だった生徒4000人を対象に行った進路追跡調査だ。それによると、大学進学者の2割強が3年秋の平日の勉強時間を「ほとんどなし」と答えた。


 ◆生徒獲得のために

 受験勉強をしなくても大学に入れるのは、近年急増しているAO入試や推薦入試があるからだ。文科省によると、07年度のAO入試で学力検査を課したのは3・8%にすぎず、推薦入試でも22・5%。多くの大学が一定基準以上の評定平均値を出願条件としている推薦入試はまだしも、大半のAO入試は高校の成績すら不問だ。少子化で大学同士の生徒獲得競争が激化する中、AOと推薦入試による入学者は現在4割を超え、私立大に限れば5割に達する。


 ◆双方に不利益と中教審

 こうした現状が大学、高校双方にとって不利益をもたらしていると結論付けたのが、中央教育審議会が08年12月に出した答申だ。答申は「多くの大学で入試の選抜機能が低下し、入学者の学力水準を担保することが困難になりつつある」「高校では、これまでのように大学入試の存在で学習意欲を喚起し、学力を定着させることが困難になりつつある」と指摘し、AO入試などの改善を促した。

 答申を受けて、文科省は今年5月、11年度からはAO入試でも(1)大学独自の検査(筆記、実技、面接など)(2)大学入試センター試験(3)資格・検定試験(4)高校の評定平均値の四つのうち少なくとも一つを合否判定に用い、「大学教育を受けるために必要な基礎学力を把握する」よう求める入試のガイドラインを各大学に通知する予定だ。さらに、出願時期に制限がなく、夏休み前に合格が決まることもあるなど、「青田買い」批判があったAO入試の出願受け付けを8月1日以降に遅らせることも求める。


 ◆必須ではない「筆記」

 もっとも、ガイドラインは必ずしも筆記試験の導入を促すものではない。文科省も「大学側が面接で基礎学力を把握できると判断すればそれでも構わない」(大学入試室)と説明し、ある私大の入試担当者は「AO入試の時期を多少遅らせるかもしれないが、内容を変えるつもりはない」と明言した。全国学力研究会の河本理事長は「仮に筆記試験をしても今まで通りほぼ全員合格させてしまうだろう。実態は変わらず、高校生が勉強するようにはならない」と冷ややかにみている。


 ◇大学が合格した高校生に基礎知識を講義 入学に備え手取り足取り 通信講座なども

 「間違ってもいいんだよ。間違うことも勉強だから」。数学の課題に取り組む生徒たちに、予備校出身の講師が丁寧に説明する。2月の平日、埼玉県上尾市の聖学院大の教室には昨年のうちに合格を決めた高校3年生たちの姿があった。英語、数学、国語の計3コマを11日間。「入学前準備教育」と名付けた一連の講義で生徒たちが学んでいるのは、中学レベルの問題だ。

 対象者は、例年入学者の6割以上を占めるAO入試や推薦入試による合格者たちで、01年に始まった。山下研一広報企画部長は「入学してくる生徒の中には中学段階でつまずいている者も多いが、社会に出た時に大切なのは中学段階の基礎学力。我々は『面倒見のいい大学』をアピールすることで差別化しようと考えた」と、導入の狙いを振り返る。AO入試で合格して講義に参加した同県内の男子生徒(18)は「数学が苦手で高校時代はついていけなかった。今日は分かりやすかった」と笑顔を見せた。

 同大のように11日間も通わせるケースは珍しいが、それでも今や多くの大学がAO入試や推薦入試の合格者向けに短期のスクーリングや通信講座、自宅学習など、何らかの形で入学前に勉強させる工夫をしている。予備校などが各大学から講義や教材の作成、添削を請け負う例も多く、東進ハイスクールを運営するナガセ(東京都)1社だけでも約100大学と契約を結んでいるという。

 大学教育を受ける上で必要な最低限の知識や学力を身に着けさせるための苦肉の策だが、実施する大学内部からも「高校の教程を大学が高校の修学期間中に行う矛盾を抱えた制度」(ある国立大の担当教授)と疑問視する声があるのも事実だ。

http://mainichi.jp/life/edu/news/20100306ddm090100101000c.html

中学生レベルの勉強を教えることが、『面倒見のいい大学』なのだろうか?甚だ疑問であるがこれが事実だ。
増えすぎた大学が少子化時代経営を続けるためには、これまで大学に行けなかった、行かなかった学生を入学させざるを得ない。
否。そのレイヤーの学生も争奪戦なのである。

大学に行きたい人がいて費用負担の意思があり、また受け入れる器がありそこでビジネスをしようという者がいて、需給関係が成り立つならば、口を挟む余地はない。
古き良き大学入試競争の時代を懐かしがっていてもしようがない。それ自体正常な事とも言えない。

確かに国民の血税から補助が出ている。だから低偏差値大学は淘汰されるべきだというのは論点のすり替えだ。
もし補助を削減したいならば、上位校も含め一律で実施すべきである。
低偏差値大学であっても需要があるならば国民から必要とされているのだ。