サントリー、寿不動産、非上場同族企業
サントリーとキリンの経営統合が失敗に終わりました。
その理由はサントリーの同族企業である寿不動産の位置付けが問題になったといわれています。
「勝ち組連合の誕生」「食品業界大再編への号砲」――日本経済新聞のスクープによって突如明らかになった、サントリーホールディングスとキリンホールデングスの経営統合を、各メディアはこんな表現で好意的に取り上げる。だが、各メディアがあまり焦点をあてない謎の会社がある。サントリーの実質的な持ち株会社、寿不動産である。
http://www.data-max.co.jp/2009/07/22_133550.html
大阪・堂島のサントリー本社内の一室にその会社がある。従業員はたった8人しかいない。サブリースのマンションなど不動産賃貸事業とサントリー各社への保険代理店業務をなりわいとし、2008年12月期決算によると、売上高はわずかに8億5,200万円しかない。社名の「寿」は、サントリーの前身が寿屋だったことに由来する。
何の変哲もないちっぽけな不動産会社だが、この寿不動産こそがサントリーを支配するツールとなってきた。非上場企業であるサントリーの圧倒的な筆頭株主として、サントリー株の89%を保有しているのである。
株式を公開しないできたサントリーは、創業家である鳥井、佐治両家によるオーナー会社の色彩が濃い。今回のキリンとの統合を果断に決めた佐治信忠社長(63)は、名経営者と慕われた佐治敬三氏の長男だ。「やってみなはれ」で知られる佐治敬三氏は、創業者である鳥井信治郎氏の二男である。寿不動産の役員にはこの佐治、鳥井両家のメンバーがずらりと並ぶ。佐治信忠氏が社長を務め、副社長は鳥井信吾サントリーホールディングス副社長(56)、取締役には佐治氏の母である佐治ケイ(85)、鳥井春子(98)、鳥井文子(62)らが名を連ねる。専務は鳥井信吾氏の義弟である酒井明久氏(57)が就いている。
サントリーの筆頭大株主であるこの寿不動産の株主も一族である。個人筆頭株主の鳥井春子氏が9.21%を保有するのを始め、佐治信忠、鳥井信吾、酒井明久の3氏が4.97%ずつ持つなど一族19人で81.57%を保有。さらに同様に一族が理事などを務めているサントリー文化財団、同音楽財団、同生物有機科学財団の3財団が18.41%を保有している。
売上高(営業収益)は先述の通り8億円余と決して大きな額ではないが、サントリー株の配当金による営業外収益はその4倍近い31億円余もあり、経常損益は35億円余の黒字だ。ここから一族らへの役員報酬9,748万円と寿不動産株からの配当金約21億円が捻出されている。
驚異的なのは寿不動産の貸借対照表である。「負債・資本の部」には、有利子負債は一切なく、株主資本が271億円も積み重なっている。その反対側の「資産の部」に目を落とすと、保有美術品がなんと121億円もある。投資有価証券は約48億円だ。ところが、サントリー株を中心とする関係会社株式はわずか56億円余と記され、大阪・東京の一等地に保有するといわれる土地もたった5億円としか記されていない。連結売上高が1兆5,129億円もあるサントリーの89%の株の評価が56億円余とは信じがたい。保有資産の評価額は簿価である可能性が高く、かなり潤沢な含み資産を有していると考えられる。
さらに不思議なのはその税負担の軽さだ。法人税、住民税などの支払いはたったの71万円しかない。税効果会計の影響があるのか、法人税調整額が2億4,542万円と、税の戻し入れのほうがはるかに大きいのである。
非上場のサントリーをこれまた非上場の寿不動産が支配し、財務や税負担、資産評価など、決して透明性は高いとは言いがたい。
同様に非上場でファミリー企業化している大企業をいくつか調べてみました。
パロマ
主にガスコンロ、湯沸器、ガス暖房装置などを製造する金属製品メーカー。本社は愛知県名古屋市瑞穂区。現在も株式の過半数を創業家である小林一族が保有する典型的な同族経営企業。社長も小林家出身。
YKK
社名の由来はYoshida Kogyo Kabushikigaishaを略したもの。YKK APは同社グループの建材部門。スライドファスナーで世界シェアの約45%を占める。富山県黒部市に大規模な生産拠点を置く。YKK株式会社は株式を一切上場していない。今後も上場の予定はないと明言。大半の株式は、YKK株式会社の創設者の一族が保有している。社長も吉田家出身。
竹中工務店
非上場。歴代の社長はすべて「竹中」姓。(株)TAKプロパティが筆頭株主(42.91%)。
ロッテ
重光家。
ロッテ、ロッテリア、クリスピークリームドーナツ - TK独り言に詳しく記載
しかし同族企業は一概にすべて悪いわけではありません。
- 株式買収によって経営権が奪われるリスクを低下させる。結果株式に左右されない経営を進めることができる。
- 会社が拡大するに従って、経営者一族がリターンを得る。特に上場時には莫大な財産を獲得できることが多い。
- 会社を一族(特に息子)に継承させることにより、社長交代など、経営陣の移行を円滑なものにできる場合がある。また次期社長候補の経営者としてのキャリア形成を、早期の段階から計画的に実施できる。
- 本来自分が得る分の収入を家族に分散させることにより、税金を削減できる。
- 長期的な視点で見た経営を進めることができる。
問題点としては
- 税法上の定義での同族会社に該当すれば、大株主の権限制限など、法的な制限が課されることになる。
- 生活費を社費でまかなうなど、会社の私物化を進める傾向にある。税法では生活費など雑多な出費を経費に計上すれば税金を節約できる仕組みとなっている背景から、この傾向は中小企業になれば特に強くなる。ただし生活費等の私的利用を目的に社費を流用した場合、税法で認められている一定の支出(交際費や福利厚生費など)を超える部分は当然ながら役員報酬として認定され、個人の給与所得として源泉所得税が課税されることとなる。
- 適切な能力を持たない者が経営者となるリスクを高める。また要職が能力以外の要因で与えられるという点で、社員のモチベーションを低下させる。
- 一族の利益を、株主や社員より不当に優先させる場合がある。例えば莫大な賠償金から逃れるための、資産分割の手段に利用される場合がある。
ちなみに、大学などでも同族を指摘されている学校法人がある。
帝京大学グループ、星城大学など文科省から同族経営を指摘された大学など - TK独り言に記載した学校法人のほかに、
近畿大学-世耕一族
都筑学園グループ-都筑一族
第一薬科大学、日本薬科大学、横浜薬科大学、福岡経済大学(2010年日本経済大学へ名称変更予定)、第一工業大学、福岡医療福祉大学(2008年第一福祉大学から名称変更)、近畿医療福祉大学(2008年近畿福祉大学から名称変更)、福岡こども短期大学(2008年第一保育短期大学から名称変更)、第一幼児教育短期大学
加計学園グループ−加計一族
岡山理科大学(岡山県岡山市)、倉敷芸術科学大学(岡山県倉敷市)、千葉科学大学(千葉県銚子市)、吉備国際大学(岡山県高梁市)、九州保健福祉大学(宮崎県延岡市)、順正短期大学(岡山県高梁市)