世界で日用品を売るユニ・チャーム(私の履歴書)

日経新聞2009/3/30 私の履歴書(30)
ユニチャーム会長 高原 慶一朗氏

インドネシア現地法人マーケティング担当者が現地の工場で働いてくれている人たちに紙おむつの評価について聞いたが歯切れが悪い。「私たちはユニチャームの製品が高いので買えません」。
まず最初にユニ・チャームファンになってもらわないといけない社員が使用していないとは。マーケット調査をしたつもりだったが、本当のマーケットを知らずにいたのだ。首都ジャカルタにはスーパーがたくさんあり、日本と変わらないと思ったが、事情は異なっていた。
車で一時間も走れば田舎になる。そこには市場や万屋が庶民の生活を支えていた。日本の雑貨は小袋に入って天井からいくつもぶら下がっている。価格が高くても小分けにすれば手に届くはずだ。我が社には3主義という言葉がある。現場、現物、現時点だ。それに則せば小袋商法は当然の帰結となる。
子供への愛情に貧富の差はない。基本機能に特化して誰もが気軽に買える「マニーポコパンツスタンダー」は2007年に生まれ、一枚入りも登場した。
商品は最高品質のモノから発売する。豊かな生活に敏感に反応する消費者にその技術を知ってもらいたいからだ。小分けにするから誰もがそれほど抵抗のない価格水準になるのがミソ。4〜5年で普及期に入ると少し価格を抑えたスタンダード版を投入し、しばらくしてエコノミー版を出す場合もある。
エコノミー版を投入し、高品質にシフトすることは基本的に行わない。一度、低価格商品として参入するとそのイメージが定着してアッパーの分野に進むのが難しくなり、市場も育たない。
上から下へ。それによってあらゆる消費者に商品が行き渡りシェアトップとなる。最高品質の商品を最適な販売ルートに乗せ、メッセージが確実に伝わる広告を出す。この勝ちパターンに持ち込めたらしめたもの。成功は成功の母だと思う。

東南アジア、インド含む南アジア各国では、万屋での小袋商法が盛んです。
われわれ日本人の感覚からすると小分けになっている、紙おむつやシャンプーなどは、ボトルタイプのモノよりも割高であると考えます。
しかしかの地の人々は、小分けの商品を好みます。
もちろん背景には生活水準の違いがあるわけですが、加えて民族性、国民性の違いみたいなものを感じます。
つまり、今ポケットにある今日得たお金を使って消費をするということにためらいを感じない、悪く言えば楽観主義ですが、消費に対して積極的であると言えます。
この民族性、国民性の違いを十分に理解しあうことが大切です。
ですから、国民性がダイレクトに反映される日用品をグローバルに展開する企業ユニチャームの話は説得力があり参考になります。